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No.0005 ITALIA アマルフィ半島タイル鑑賞会

西欧・南欧の最強観光地、フランスからはプロヴァンス、コート=ダ=ジュール、イタリアからはトスカーナ、アマルフィ、そしてスペインのアンダルシア、ポルトガル。どれも甲乙つけ難く、景色だけではなく人も食べ物も素晴らしい土地ですが、いずれもかなりの「タイル文化」が浸透しているところです。それはつまり、「サラセン文化」の影響を大きく受けたということ。中世ヨーロッパにおいて、イスラム教の人や国は「サラセン」という言葉でひとくくりにされていました。サラセン人の襲撃を受け、攻防し、高い場所に街を形成し、戦った海歴史でもありますが、それらのセンスが融合して出来上がったこの地域のタイルは世界的にもファンの多い、美術的だけでなくとても実用的なものです。私もあらゆるタイルを見て歩き、最終的にはポルトガルの"アズレージョ"が最も気に入っているものの、その土地の景色風土に馴染んだデザインはいずれも地元民愛を感じます。

 

さて、今回は、南イタリアのアマルフィ半島、ここを代表する街「ポジターノ」「アマルフィ」で装飾タイルを2008年2月に見て歩きました。今更ながら、写真を見返して1枚1枚感想を述べていこうと思います。

■ポジターノで見つけたタイル装飾たち

(1)これはポジターノのみならず、アマルフィ半島全域、ナポリ方面まで広く描かれた大きなタイル作品です。あちこちにイルカのペアが泳いでいたり、帆船が浮いていて楽しいです。ナポリ湾案内はポセイドン、サレルノ湾案内は人魚がしてくれるみたいです。私はナポリから海岸線を走り、アマルフィ半島の海沿いの街を全部訪れて、さらに南のサレルノまで行きました。というようなことを思い出しながら辿れるこのタイルは、旅の思い出にもなっていいですね。

レストランの店頭にあった魚のタイルと、 ポジターノ産のリモンチェッロをテーマにしたタイル。

 

(2)南イタリア全域ですが、アマルフィ半島も食材は魚介類がイチオシですね。この魚のタイルにはクラゲ、タコ、ヒトデ、サンゴ、タツノオトシゴ、巻貝、イワシ、タチウオ、ヒメジ、スズキ、海藻、ここまではパッと見てわかったのですが、青と赤と黄色の鯛に派手な背びれ胸びれの魚が何だろう・・・これらが一度に描かれて楽しい水族館のようです。でも黒い線状の海藻はもうちょっと少なくてもよかったかもと思うのですが、線の勢いからしてノリノリで描かれた気がするので、作者にとってはきっと大事な要素だったのでしょう。リアルでダークな色使いが渋いながらも、お魚たちの表情も良いですね。

(3)リモンチェッロのタイルは、後ろの壁が赤ですが、とてもよくマッチしています。タイルは一定のモチーフにより縁取りがなされていて色の組み合わせがとても好きです。ネイビー、セルリアンブルー、イエロー、グリーンと白。このまま、ラベルとかペーパーナプキンとか紙ものの印刷物にしても素敵ですね、私もこんなデザインがサラサラと描けるようになりたいです!

 

優雅な、「こちら側」と「あちら側」の景色構成パターン。ポジターノの街が描かれている2枚です。

 

(4)赤の使い方が印象的なタイル。大きなレモンも実っています。実際のポジターノは全景は白っぽい街ですし、縮尺もリアルではありませんが、よくデフォルメして可愛く盛り込んだなあと思います。「こちら側」が非常に見晴らしの良い優雅な空間であり、そして回廊の支柱と市松模様のタイルから、とてもサラセン的な建造物ですね。レストランやホテル、もしくはお金持ちの別荘かもしれません。賑やかで旅気分の盛り上がる作品ですね。

(5)もう一枚はベンチの向こうに見える海とポジターノです。ポジターノを描く前にベンチにも何か描きたかったのでしょうか?どこかの島を見ながら働く漁師と女性と犬が描かれています。昔から、漁そして魚というのはお金、豊富ということも表します。そんな黄金のベンチに座ってポジターノを眺める。このタイルではポジターノの後ろの山の全景も描かれています。山と海の間のわずかなスペースに家をてんこ盛りにした光景は昔は必要に迫られて、だったのでしょうが、「必要に迫られて」と「美的感覚」が共存するのが素晴らしいところです。

(6)ポジターノの街の構成をよく捉えて、海の漁師をクローズアップした作品です。ポジターノのサンタマリア・アッスンタ教会のクーポラが目立っています。マヨルカ焼による細かいタイルがモザイク状に貼られていて、フォルムとともにとても珍しく美しい教会ですね。私がアマルフィ半島に行ってみたいと思った一番の原動力が、このアッスンタ教会のクーポラかもしれません。

カップ(杯)は「豊かさ」の象徴。なタイル2つ。

 

(7)フルーツ盛りのカップには、歴史的な地中海を象徴するようなぶどうと柘榴。スイカ、オレンジ、レモン、梨、りんごの姿もありますね。実り・収穫を象徴する果物は女性的な優しい豊かさをあらわしているようです。でもぶどうの実の連なり方は正直かなりおかしいですね(笑)バランスをとるためにどんどん勝手に書いただけな気がします。

(8)お花が生けられた方も謎のツル状植物にガーベラみたいな花が咲いていて、ちょっとこんなの見たことない感じです。このぐらい、想像でテキトーに描いていいんだな、と思うことが南イタリアの手描きのタイルや食器に感じることがあります。どちらのタイルも背景は茶色ですが、境目は白で残してあり、もしかすると白のままでも素敵だったんじゃないかと想像してしまいました。なんで茶色に塗ったんだろう。。。私だったら白か、ネイビーにしたいです。

(9)ポジターノのバス停(163号線上にある真下が海!なバス停です)にある、タイル標識。14分の7、これなんやったかな、この旅行中はこの数字を追っていたような記憶があるのですが、すっかり忘れてしまいました。イエローとネイビーの組み合わせはやっぱり好きな色。

(10)宿泊したホテルの床もブルーのタイル。ポジターノにはいわゆる「安宿」はありません。観光で成り立っている小さな秘密の街なので、ハイシーズンは予約必須、ローシーズンは「営業してない」にご注意ください。

■アマルフィでもタイル鑑賞

(11)ここはアマルフィの中心部、海沿いに作られた広いパーキングから見た街への門です。PORTA DELLA MARINA 「港への門」と書かれた横にとても大きなタイルが貼られていますが、地中海全部が描かれていました。イタリアは南イタリアと シチリア島しか描かれておらず、あとはギリシャやトルコ、中東、エジプト方面まで。アマルフィはこれらの広範囲との交易があったということですね。実際、12世紀まで「アマルフィ公国」と名乗り、ベネツィアやジェノバが盛り上がるまでは、ここが海洋都市国家として地中海貿易を牽引していたのです。今では、かつての商業の中心地といった雰囲気は見られませんが、味のあるタイルで歴史を教えてくれています。

魚のタイル2パターン

 

(12)船で漁をしているその下に泳ぐ魚たちのタイル。これが今回の旅で一番のお気に入りです。でも旅行中には気づかなかったのですが、今見返してみると、ポジターノで見た海草描きすぎ!と辛口批評をしてしまったあのタイルと作者が同じなのでは・・・と思い始めています。多分そうです。もしかすると海上の絵は別の人かもしれません。タイル合作。

(13)シンプルなブルーの中にひらひら泳ぐタコや魚、トビウオみたいにヒレが大きいです。右下でムール貝も泳いでいます。これもまた、、、絵のプロが描いたとは考えにくいいい感じの出来栄えです。なんだか勇気が湧いてくる一作。私も絵を書くのは好きなのですが、本格的な訓練をしたわけではないのでこういう自由な絵が街中の目立つところに堂々と貼られているのは良いですね。

(14)優雅なヴィラ、レストランから眺めたアマルフィ全景。背後のとんがり山まで描かれてあって、良い眺望です。ポジターノにあった同パターンの絵は色々デフォルメ感がありましたが、こちらは割と忠実な縮尺で、一瞬タイル作品ということを忘れて見てしまいました。1枚の絵みたいですね。

(15)白い建物の中をマリア様的な方が乗ったお神輿を担いで行進する行列です。クルマ関係の広告に挟まれています。演奏の吹奏楽、マリア様、憲兵、大司教とお付きの従者、シスター、村人、観光客、の順でしょうか。世界的にどこでも「神事」というのは行列になって練り歩くのが定番で、自ら移動して回るというPR活動の原点です。

(16)こちらも宗教行事行列の図。黒っぽい背景で街や行列が目立つようになっています。アマルフィはポジターノよりはほんの少し平地もあるので(といっても本当にほんのちょっと)まっすぐ1列なのかもしれません。内容的にはこちらの方が本気モードの行列ですね、コムーネを表す旗もたくさん掲げられて、やはり、マリア様が担がれています。一番右にはアマルフィが誇る「アマルフィ大聖堂」。ファサードの特徴的な柄、アラブ風の回廊、たくさんの教会に見飽きた時に見ると、新鮮です。

(17)円型に整えられたタイル。下には「BAGNO ARABO」とありますが、これはアラブ風お風呂、ハマムがありまっせ、ということですね。レモンや様々な花越しにみるアマルフィ。ポジターノとは逆の位置から見るのが絵になるようです。こういう丸いタイルのピザ皿があったらいいなと今思いました。

(18)帆船がメインに描かれた絵画的なタイル。朝焼けか夕焼けか、どちらでしょうね。これはサボテン越しの絵になっています。いずれの絵も背後に緑のだんだん畑がありますが、これはレモン畑です。イタリアのレモンはパステルイエロー?というぐらいトーンの明るい柔らかいイエローです。

ポジターノとアマルフィの2都市のタイル、いかがだったでしょうか。結構しつこく歩き回って、これは!というものは全部撮ったので、もし行かれる方がいらっしゃればぜひこれらがどこにあるか、探してみてください。

訪問日:2008年2月3日、4日


ext&photo : maki

フランス留学、雑誌・旅行・航空会社を経て企画制作会社設立。2013年より東京・三軒茶屋にて雑貨&デザインアトリエをオープン。